日本農業新聞が都道府県を対象に2024年度の移住者数を調べたところ、19県で過去最多だったという。調査や公表を行っていない自治体を除く37府県からの回答に基づく数字だ。(日本農業新聞ウエブ版、2026年2月17日)
移住者の定義は、「5年以上居住する意思を持ち、県外から移住」「転入者のうち就学と転勤による移住者を除いた数」などと自治体ごとに違いがあるものの、参考になるデータだ。
移住者数が過去最多だった自治体の具体例を挙げるとーー
▽福島県 3799人。5年間で4倍弱に増えた。若い世代が中心
▽静岡県 2951人。5年間で2倍以上になった
▽山口県 4578人。8年連続で最多を更新
いつ頃からの継続的な比較に基づき「過去最多」と述べているのか、この記事からは分からない。また、移住の理由に関する詳しいデータがそろっているわけではない。(外国人が地方の小売業やサービス業にどんどん就業していることなども影響しているのでは、と想像する)
こうしたあいまいさを含む点を意識して読むべき調査結果ではあるが、日本農業新聞では、自治体担当者への聞き取りもふまえ、「農ある暮らしに魅力」があり、「田園回帰」の流れがあるのだろうと分析している。
ところで、ここで取り上げた移住者「過去最多」は、各地自体からどれだけ外に出て行ったかを視野に収めての話ではない。あくまで、入ってきた人の数に焦点を当てたものだ。
総務省が2月3日に公表した2025年の人口移動報告によると、各都道府県の転入者から転出者を引いた数値がプラスに、つまり転入超過になっている自治体は7都府県しかない。
▽東京都 6万5219人▽神奈川県 2万8052人▽埼玉県 2万2427人▽大阪府 1万5667人▽千葉県 7836人▽福岡県 5136人▽滋賀県 353人
東京への転入者のうち、5万7263人は20~24歳の若者だった。東京を中心とする大都市圏へ地方の若者が大量に流れ込むという構図になっている。北海道のマイナス5162人、青森県のマイナス4542人、新潟県のマイナス6379人といった数字は、この傾向の現れだろう。
ところで、若者をどんどん吸い込む東京都の合計特殊出生率(女性1人が生涯に生む子どもの推定数)は0.96まで落ちている。単純計算すれば、5万人(女性、男性各2.5万人)の若者が東京に行くと、次の代で2.5万人弱となり、その次の代で1.2万人台まで減る。
東京は、日本という国でいわば「巨大な人口激減マシーン」の機能を果たしている。そこに向けて毎年何万人もの若者が吸引されていくわけで、人口が急激に減るのも当然である。
また、日本の製造業の心臓部である愛知県(マイナス2181人)や静岡県(同6711人)で、転出が転入を大きく上回っていることにも注意しておきたい。製造業の停滞、 あるいは自動化による雇用の減少が進んでいるということか。
今回、地方移住者数と転入転出者数という二つのデータに目を向けた。
ミクロで見れば、地方に移住して新しい生活を始める人は増えている。そこには、農を営む人たちも含まれよう。マクロでみれば、絶望的なまでに大都市圏への集中が進み、国の人口の激減や地方の苦境が当面続くことは間違いない。
とはいえ、大都市圏のサラリーマンの所得水準は、国際的なランクで長年にわたって低落傾向にある。大都市の住民には、食糧を地方や外国の産地にまるっきり依存しているという弱さもある。地方の第一次産業従事者の所得水準が低いことは事実だが、大都市圏に大勢の人間が群がってサラリーマンになることの合理性もまた、小さくなっているのだ。
「大都市圏と地方」の二項対立の図式の下、東京をはじめとする大都市圏にばかり人と冨が集まるワンサイドゲームを続けていては、この国はもちそうにない。マスコミでは「東京ひとり勝ち」などと言うが、随分のんきな言葉だ。どこも勝っていない、国全体が下り坂というのが実態だろう。
これから、どうするか。考えられる方向性のうちの一つに、日本人はこれから二つの住所(例えば、東京と青森)を持ち、2拠点化していくのがよいのではないか、という議論がある。賛成だ。週のうち3日間、街でサラリーマンをして、3日間は地方で農作業に参加する(あるいは沿岸漁業を手伝う)といった暮らし方があっていい。
人の意識を改め、働き方をはじめとする習慣を少しずつ変え、補助金などの制度を整えて、希望の持てる方向に現状を変えていければよいと思う。

